【衆院本会議】情報処理促進法案が審議入り「最大のリスクは石破政権の信頼とリーダーシップが失われていること」池田まき(北海道5区)

掲載日:2025.03.27

 衆院本会議で3月25日、「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」の趣旨説明、質疑が行われ、池田真紀議員が会派を代表して質問に立ちました。本法案は、生成AIの急速な普及に伴う計算需要の増加に対応し、半導体やデータセンターなどのハードウェアと生成AIなどのソフトウェアが連携して高度化するエコシステムの構築を目指すもの。​また、デジタル技術の利活用を推進するデジタル人材の育成も目的としています。予定原稿は以下の通りです。



「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」

立憲民主党 池田まき

 立憲民主党の池田まきです。
 ただいま議題となりました「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問いたします。

【冒頭】
 冒頭、ひと言、申し上げます。多くの国民の皆さんが、総理が当選1期生に10万円分の商品券を配布したことは問題だと、これまでの総理の説明には納得できないと言っています。しかも歴代の総理などにも同様の手土産の事例があると自民党内から証言が出ているのは異常ではないですか。この実態を重く受け止め、石破総理は党総裁としてきちんと党に再調査を指示し、あらためて自ら説明責任を果たすことを強く求めて質問に入ります。

 世界各国では産業政策や経済安全保障の観点から、自国内で半導体の製造基盤を確保するための支援策が講じられています。日本国内でも、安定的な半導体の開発・量産による社会・経済の発展に向けて、予見性を高めつつ大規模な官民投資を誘発し、そのための必要な財源を国として確保し支援を行っていくこと、それが本法案の狙いだと思います。
 私は、今回の半導体分野の国家プロジェクトが日本の産業政策にとって必要であることを踏まえながらも、解決していくべき論点を含め、以下質問をいたします。

【これまでの半導体政策の失敗の検証】
 日本の半導体産業は、1988年には、世界シェアの実に50.3%も占め、世界を席巻していました。しかし、その後の著しい凋落の末、2024年のシェアは7.4%程度にも落ち込んでいます。2021年に政府がまとめた「半導体戦略」によれば日の丸半導体凋落の主な要因として「日米貿易摩擦によるメモリ敗戦」「設計と製造の水平分離の失敗」「デジタル産業化の遅れ」「日の丸自前主義」「国内企業の投資縮小と韓国・台湾・中国の国家的事業育成」の5点を指摘しました。過去の半導体政策の反省を踏まえ、今後の半導体政策についてはどう臨もうとしているのでしょうか。武藤経済産業大臣にお聞きします。

 本年2月7日の予算委員会において、我が党の本庄さとし委員がエルピーダメモリ経営破綻に関し、国の支援がなく、孤軍奮闘していたと指摘した中で、武藤大臣は政府として適切な投資をしてこなかったという反省があるという趣旨の答弁をされました。当時のような無責任な対応を繰り返すことは許されないと思います。武藤大臣が予算委員会で述べた「適切な投資」とは、今後どのように具体的な形で行うのか、所見を求めます。

【AI・半導体産業基盤強化フレーム】
 2023年度までに、少なくとも米国では14兆円、中国では17兆円もの規模で、財政・税制支援等を進めてきたとされていますが、日本は、その半分程度の規模の支援と承知しています。こうした中で昨年11月22日に閣議決定した「AI・半導体産業基盤強化フレーム」では2030年度までの7年間で10兆円以上の支援を行うこととしました。
 ところで、その10兆円は補助・委託等で6兆円程度、出資・債務保証等の金融支援で4兆円以上としています。そもそも、国民の生活及び経済安全保障として、民間ではリスクが大きすぎてできない政策だからこそ、国家プロジェクトとするのであり、補助のみならず国が大型出資者となれば国の責任が明確になると考えますが、政府の考えを経産大臣に伺います。

 補助・委託等の6兆円程度のうち2.2兆円は財政投融資特別会計の投資勘定からエネルギー対策特別会計に繰り入れすることになっていますが、財投特会は投資による出資と回収が本来の趣旨目的と考えますが、なぜ繰り入れして補助に使えるようにするのでしょうか、経産大臣に伺います。

 エネルギー対策特別会計の負担において公債を発行できるとしていますが、なぜ財投特会投資勘定から繰り入れるのですか、またこの公債はAI・半導体施策に限定されるのでしょうか、伺います。

 次に、1.6兆円は既存の基金などから活用するとしていますが、わが党は経産省所管の基金に限らず全ての基金について3年ルールを当てはめて、7.8兆円の無駄な積み上げ額を見つけて、予算修正の財源としました。余った予算を使うことは妥当と考えますが、経産省は所管する既存基金からの国庫返納金を新たな勘定に繰り入れてAI・半導体産業基盤強化フレームのスキームに当てようとしています。経産省所管の既存基金に限定するような仕組みにしているのは、なぜでしょうか。

 また、2.2兆円については、既存の基金見直しの他にGX経済移行債を活用することとしています。デジタル産業の代表格である半導体事業に関し、脱炭素を目的とした財源を活用する理由をお示しください。

 基盤強化フレームの複雑さにより、資金の流れが不透明になるおそれはないのでしょうか。国策とはいえ、国民の皆様の税金がその原資となることを思えば、国の支出は、より透明性が求められることになります。本事業のモニタリングは、経済産業省自身が行うことはもちろんですが、国民や国会に対しても十分な説明が必要です。どのように事業の透明性を確保するのか、大臣に伺います。

【指定高速処理用半導体の選定・公募制度】
 次に、法案による金融支援、税制措置の対象になる2ナノ半導体など情報処理の高度化のために特に必要な指定高速情報処理用半導体の指定と事業者公募についてお聞きします。
 法案では経済産業大臣が、半導体を指定し、公募の指針を定めて事業者を選定するとしています。5G促進法でも似たような要件でロジック半導体やメモリ半導体が支援対象となっていますが、これとはどのように区別するのでしょうか。また、重複するようなことはあるのでしょうか。
 また、公募で選定される事業者は複数になるのでしょうか。
 さらに、選定する段階や選定後の実施計画の評価などについて、国が事業者の出資者である場合、選定・評価を国以外の第三者的立場にあるものが客観的にやらなければならないと考えますが、どのようにやるのでしょうか、大臣にお聞きします。

【デジタル人材の育成・環境整備】
 本法案では、行政独立法人情報処理推進機構IPAの業務として「デジタル人材の養成や資質向上に係る規定」を追加していますが、具体的にIPAはどのような役割を果たしていく機関となるのでしょうか。また、IPAや企業による育成はもちろんのこと、大学、高専、高校の役割も重要です。長期に渡る半導体人材の養成、資質向上に向けどのような政策を進めるのか、大臣の所見を伺います。

 現在、2023年から政府が主導してきた次世代半導体製造工場が建設中の北海道千歳市では、交通渋滞を避けるためにパークライド方式で建設ラッシュ時において、多い時は1日3,000人、量産体制後は2,000人近くのオペレーターやエンジニアが通勤する予定です。
 熊本県菊陽町のTSMCの事例をみても交通渋滞は大きな課題にもなっています。
 政府は、現在のところ、国家プロジェクト産業拠点整備等に必要となる関連インフラ整備への支援のため「地域産業構造転換インフラ整備推進交付金」を創設し、地域を選定しています。具体的なこれらの進捗状況をチェックすると同時に、その交付金の使途の範囲を駅の建設、教育環境や医療環境の整備等にも活用できるようにするという考えはありませんか。大臣の所見を伺います。

 工場隣接地に駅の設置を望む声も出ていますが、政府は把握されていますか。駅の設置等は鉄道会社や自治体等で検討すべきことですが、インフラ整備推進交付金の対象にならないとしたら国はどのように解決をはかっていくべきものと考えますか、国交大臣に伺います。

 同時に半導体は前工程、後工程などの関連事業が多数あり、関連産業の集積が重要ですが、政府はどのような施策をもって集積を進めるか、所見を伺います。

【環境への影響】
 半導体製造拠点の地域住民の不安の声にも向き合っていかねばなりません。
 一般論として、半導体製造などに代表される、大量の水と化学物質を使う工場においては、その排水処理が適正に行われているのかどうかは、住民生活にも関わることです。
 現在建設中のラピダス社における次世代半導体の製造後の排水において、千歳川に排水される水には、PFASはどの程度が含まれることになりますか。化学的な知見に基づいたとき、その水準に対してどの程度の量が想定されますか。そして、地域住民の不安を取り除くためにどのような対応を行うのですか。経済産業大臣と環境大臣に伺います。

 世界はPFASを使わない方向です。日本でもPFASを使わない半導体材料の研究が進められていることも伝えられています。ラピダス社が、最先端の技術とともにグリーンな環境を経営方針とするならば、日本でも大きなヴィジョンを持って「大切な水」「安心な水」と半導体テクノロジーをともに深化させる、何かを犠牲にすることからの卒業し、北海道、日本がその第一歩になる、こうしたあらたな技術の活用も重要だと考えますが、所見を伺います。

【結び】
 本事業は『国家プロジェクト』だと、ただ旗を振れば成功するというものではありません。多額の財政支出と、長期にわたるプロジェクトの推進には、国民からの政権に対する信用と、総理大臣のリーダーシップが何よりも求められます。
 高額療養費の自己負担引き上げを巡る問題では、総理の決断が遅れ、議会を大きく混乱させました。「秋までに」ということだけを決め、未だに検討の方法も示されておらず、当事者の不安はもとより国民の不信感は募るばかりです。
 本件の最大のリスクはこういう石破政権の信頼とリーダーシップが失われていることではないでしょうか。そのことを申し添えて、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。