【衆院本会議】にしかわ将人衆議、食品流通の合理化、取引適正化法案について代表質問

掲載日:2025.04.17

 衆院本会議において4月17日、「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明質疑が行われ、立憲民主党のにしかわ将人(北海道6区)衆議が登壇しました。



(はじめに)
立憲民主党にしかわ将人です。会派を代表して、「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」について質問いたします。
私たちの豊かな食生活は、国内外で生産された多種・多様な食料によって支えられていますが、我が国の食料自給率は38%にとどまり、多くの食料を輸入に依存する中、世界市場における食料争奪の激化や、円安などにより調達の不安定化が進んでいます。一方、国内で生産される食料についても、農業者の減少・高齢化や農地の減少など、生産基盤の弱体化が急速に進み、深刻な局面に入ろうとしています。
このような情勢下、昨年、農政の憲法とも呼ばれる食料・農業・農村基本法が制定から四半世紀を経て改正されました。
本法案は、基本法の改正を受けた関連法案として、国の最も重要な責務である「国民の命を守る」という食料安全保障の確保の観点からも重要と考えますが、本法案に定められたそれぞれの措置が実効性を伴うものとなっているのかを、質疑を通じて明らかにすることが必要であります。以下、全て農林水産大臣にお伺いします。


(再生産可能な水準の所得の確保)
まず一つ目に、農林水産物の再生産が可能となる水準の所得の確保についてお尋ねします。
本法案においては、飲食料品等の取引の適正化に関する措置として、飲食料品等事業者等の努力義務を定めております。ここでいう飲食料品等事業者等とは、農林漁業者を含めて、製造、加工、流通、販売業者を指しますが、それぞれの取引の相手方から、費用などを示して、取引条件に関する協議の申し出がされた場合には、誠実に協議に応じる事とされています。
資本主義社会にある我が国においては、食料価格は基本的に市場原理により形成されますが、合理的な価格形成を実現するための措置が、本法案では、あくまでも努力義務に留まる内容となっている中で、どれだけの実効性を担保する事ができるのか、見解をお聞きします。

また本法案の施行によって、米価格の高騰や暴落を防ぎ、価格安定を図る事が出来るのか、見解を伺います。

米国の関税措置によって、今後の日米交渉においては、米国農産品の関税を下げるよう米国側から要求されるかもしれませんが、日本政府として軽々に応じないで頂きたい、決して日本の農林水産物を交渉材料にしないで守って頂きたい、と強く要望いたします。
ただ、これまでも日米貿易協定でしわ寄せされてきたように、今後の交渉如何によっては日本の農林水産物の価格形成に影響を与えることが予想されます。
合理的な価格は、飲食料品等事業者等や消費者が、共に納得する事ができる価格であるべきですが、現在の米価高騰の状況を見るまでもなく、利益が相反する立場にある関係者が協調して価格形成を行うことには、やはり限界があると考えます。本法案で生産者が再生産可能となる価格形成を実現することができるのでしょうか、見解をお聞きします。

価格形成をコントロールして農家を支えるのはもう限界ではないでしょうか。我が党は、食料価格が市場経済で形成されている現状にある中で、生産者が再生産可能な所得を確保するためには、農地に着目した生産者への直接支払の必要性を訴えて来ました。生産者の窮状も踏まえて、新たな直接支払の創設の方が、合理的と考えますが、見解をお聞きします。

先月30日、都内において「令和の百姓一揆」と称して、主催者発表で農業者を中心に全国から約3200人、支援者を含めると約4500人が集まり、米価格の高騰にあっても、全く好転しない生産現場の窮状と欧米並みの所得補償を訴えての大規模なデモ行進が行われました。主催者挨拶では「農民が消え、作物が消え、村が消えようとしている。日本の農業は崩壊局面に入ろうとしているのに、多くの国民はそれを知らない。今日がスタートだ。今後とも一緒に闘って欲しい」などと、生産現場の危機感を切に訴えていました。
この農業者らのデモ行進での「食と農を守ること」「全ての農民に所得補償を」などの切実な訴えについて、大臣はどのように受け止めていますか、見解を伺います。



(商慣習の見直し)
二つ目に、商慣習の見直しについてお尋ねします。
先週の本会議で、下請法改正案の質疑がありましたが、本法案は飲食料品等事業者等における、売り手と買い手の関係におけるいわば下請法の農林水産業版という観点の法案であると理解しています。
そこでまず、その売り手と買い手の間における、いわゆる買い叩きや、悪しき商慣習の見直しが、本法案の目的という認識で良いか、見解を伺います。

一例として、パンや牛乳など日配品の製造においては、小売業者からの受注期限は、多くが納品2日前とされていますが、一部では、納品前日とする商慣習が存在しています。この商慣習により、需要が明らかでないまま、生産が行われる結果、大量の廃棄が発生するケースや、納品前日の深夜に及ぶ勤務を強いられるなど、様々な問題が生じています。
本法案においては、飲食料品等事業者等の努力義務として、取引の相手方から、商慣習の見直しなどの、持続的な供給に資する取組の提案がされた場合には、必要な検討及び協力を行うこととされています。
この見直しの対象となる商慣習には、この他、賞味期限の3分の1を経過した商品の納品を受け付けない、いわゆる「3分の1ルール」の見直しなども含まれるものと考えますが、どのような商慣習を見直しの対象とすることを想定しているのか、見解を伺います。

また、商慣習の見直しについて、必要な検討及び協力を行わない事業者等に対しては、指導や勧告・公表などの規制的措置が講じられることとなりますが、これらの規制的措置により、不適正な商慣習が改善されるのか、どこまで実効性が確保されると考えているのか、実効性を確保するために、下請Gメンの配置や、公正取引委員会との連携など、具体的にどのような取り組みを進めるのか、お聞きします。


(判断基準の策定)
三つ目に、本法案では、農林水産大臣は、飲食料品等の取引において、持続的な供給に要する合理的な費用等の考慮を求める協議の申し出があった場合に、誠実に協議することなど、飲食料品等事業者等が講ずべき措置に関し、省令で判断基準を定めるものとされています。また、その措置の実施状況が、判断基準に照らして著しく不十分であると認められる場合は、事業者等に対し、措置をとるべき旨の勧告をすることができるとされるとともに、勧告に従わない時は、その旨を公表することができるとされています。
事業者等の講じる措置が、どのような場合に実施状況が著しく不十分であると認められるのかについては、個別の事案ごとに判断することになると考えられますが、社名や違反事実等が公表された場合、違反者は大きな社会的制裁を受けることになります。
このため、省令において判断基準を定めるに当たっては、事業者等の講じる措置が、どのような場合に著しく不十分と認められるのか、実態を分析して、問題となり得る行為を可能な限り具体的に、かつ、わかりやすく示すことが必要であると考えますが、見解をお聞きします。

また農林漁業者と食品等の製造、加工、流通、販売業者との間には、規模や資金力などにおける決定的な格差がある中で、その事をどのように斟酌して、判断基準を定めるかについても、見解をお聞きします。


(4品目以外の品目の指定)
四つ目に、対象となる指定品目についてお尋ねします。
本法案では、取引において、持続的な供給に要する費用について認識しにくい飲食料品等を、農林水産大臣が省令で指定するとともに、この指定品目については、農水大臣が認定したコスト指標作成団体が、コスト指標を作成することとされています。
指定の対象とする具体的な品目に関しては、米、野菜、牛乳、これらに豆腐と納豆を1品目と数えた計4品目について、関係者間で協議が行われているものと承知しております。また指定品目については、取引において、コスト指標を活用することにより、買い手に対して費用を効果的に説明することが可能となることから、売り手の価格交渉力が高まるものと考えられます。
具体的な品目の指定に当たっては、今後、食料・農業・農村政策審議会などの意見を聴いた上で決定されるものと理解しておりますが、産地の違いも含めて、多種多様な品目について、今後どのように指定に向けた関係者間の協議を行い決定していくのか、見解をお聞きします。

また現在、協議が行われている4品目以外の生産者の中には、自らの生産している農林水産物が、指定品目となることを期待する声がありますが、現在協議中の4品目以外に、今後どのような品目の指定を想定しているのか、伺います。

またコスト指標作成団体の構成メンバーを、今後選定していくことになりますが、同一事業者団体にあっても、企業によってコスト差が存在し、また他企業に公開できない、企業の内部情報などもあると考えられますが、どのようなメンバーで構成されて、正確なコスト指標を作成していくのか、見解をお聞きします。


(おわりに)
食品等の持続的な供給に要する、合理的な費用を考慮した価格形成がなされ、農林水産業と食品産業の健全な発展を実現するためには、農業者が再生産可能な安定した所得を確保する必要があります。
本法案における、さまざまな措置が努力義務にとどまり、一定の限界があるなかで、実効性を担保するためには、一方で農地に着目した新たな直接支払の創設も必要と考えます。持続的な農産物の供給を実現するため、現行の農林水産省の予算にとどまらず、政府として直接支払制度創設に必要な予算を確保し、強い決意を持って我が国の食料安全保障を、より確かなものにしていくべきと考えますが、大臣の決意を聞かせていただき、私の質問を終わらせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。