【衆院本会議】川原田英世(北海道12区)衆議「再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、持続可能な社会をめざす」
掲載日:2025.05.09
衆院本会議で5月8日、「環境影響評価法の一部を改正する法津案」に対する趣旨説明質疑が行われ、かわはらだ英世(北海道12区)衆議院議員が会派を代表して質問しました。
国内では、再生可能エネルギーの設備を中心に、環境影響評価法の対象となる建替事業の増加が見込まれます。本改正案はそうした建替事業についての手続きの合理化など一定評価できる点もありますが、いくつか問題点もありますので、現状における課題等を踏まえて、以下、すべて環境大臣に質問いたします。
1.まず、環境影響評価制度の事業規模要件について伺います。
国内において、例えば再生可能エネルギー事業を進めていく上で、適正な環境配慮と地域の合意形成が十分に図られていない事例が散見されます。生物多様性豊かな釧路湿原周辺において建設が相次いでいる太陽光発電事業については、そのほとんどが環境影響評価法と北海道環境影響評価条例の対象外の事業規模となることから、事前に市民が計画について知ることもなく、工事が実施され自然が損なわれて初めて事業の実態を知ることとなっています。環境省や国交省も構成メンバーである「釧路湿原自然再生協議会」は複数の事業区域が近接しているケースは相乗的に大きな影響が生じる可能性があるとし、個々の事業規模だけではなく、近接する複数の事業による累積的な影響への対応を提言しています。
このように、近接する複数の事業区域を一体として捉え、累積的な環境影響を適切に評価する必要性についてどのように考えているのか、大臣の見解を伺います。また、地域住民などの懸念が事業者や自治体に共有され、実効性のある対策が講じられるようにする必要があると考えますが見解を伺います。(環境大臣)
2. 次に、事業の工事中において、環境アセスメント時にわからなかった環境状況が判明した場合の対策について伺います。
沖縄県の辺野古基地建設の埋立工事では、計画時には分からなかったとされる軟弱地盤があることが判明し、工事の規模と内容が大きく変わり、工期、予算が当初計画と比べ実質約3倍となるなど大きく変更されましたが、住民への説明や地域の意見を聞く場は設けられず、強引に進められていると指摘されています。このような、当初の環境アセスメント時においてはわからなかった状況が工事中に判明した場合で、極めて重大な場合には再度手続きをやり直すことも含め、何らかの手続きを踏む必要があるのではないかと考えますが、大臣の見解を伺います。(環境大臣)
3. 次に、工事が終了し、事業実施後に環境アセスメントでは想定していなかった環境への影響が生じた場合の対応について伺います。
北海道幌延町では、風力発電施設の稼働後、国の天然記念物であるオオワシなどが複数回バードストライクで死傷する事態が発生しました。環境アセスメントでは影響は小さいと報告されていましたが、実際には想定の十倍以上の被害が確認され、風車の稼働が一時停止するなど、現実との乖離が明らかになりました。環境アセス段階で影響は小さいとされた被害が事業実施後に重大な影響を現にもたらした場合には、現行法ではどのように対応することになっているのか、大臣の見解を伺います。また、発電所の環境アセスの場合、電気事業法の特例により環境大臣への報告書の送付は義務付けられていないため、事業実施後に何らかの重大な影響が生じても、環境大臣には報告書に対して意見を述べる機会が与えられていません。報告書が送付されるための制度上の仕組みを早期に構築し、意見を述べることができる仕組みが必要と考えますが、大臣の見解を伺います。(環境大臣)
4. 次に、本改正案における建替事業に係わる手続きについて伺います。
国内の風力発電については、1981年に国内初の大型風車の開発が始まってから、40年以上が経過した今、風力発電施設の建替えや解体が予想されます。このことから、本改正案では、古くなった発電所や設備を建て替える際、手続きを合理的に進められる仕組みが取り入れられている点は一定評価いたします。一方で、技術の進歩によって設備の大型化や大規模化が進んでおり、建替えであっても環境への影響を考慮し、一定の基準を設けた上で事業者に環境配慮を求める必要があると考えます。さらには、建替えの際の資材の運搬や置き場のために、新たに自然環境に手を加えることの影響もしっかり考えることが大切だと考えます。そこで、建替えにおいて考慮すべき周辺環境の範囲をどのように考えているのか、大臣の見解を伺います。また、設備の大型化によって環境影響が拡大するような場合は、どのように環境への配慮を環境大臣意見等で求めるのか大臣の見解を伺います。(環境大臣)
5. 次に、施設の建替えにおける環境保全のための配慮の内容について伺います。
風力発電施設の稼働時に基準を超えた騒音や景観に影響を及ぼしているなどの場合には、建替事業においてその問題をどう改善するか、建替えによって環境への影響が回避・低減されるのかの調査と、その評価が必要になると考えられます。そこで、施設の建替えに際して、過去に生じていた環境への影響をどの程度改善する必要があるのか、そして、改善の基準を、誰がどのように作成するかについて大臣の認識を伺います。さらには、内容が適切かどうか、どの指標で判断するのか、どのように判断する主体を設けるのか、大臣に見解を伺います。(環境大臣)
6. 次に、環境影響評価図書の公開について伺います。
環境影響評価図書とは、環境影響評価法に基づく手続きとして、事業者が作成し縦覧・公表する配慮書、方法書、準備書、評価書および報告書等の書類の総称で、アセス図書とも言います。現行法では、それぞれの手続段階において1ヶ月の縦覧・公表期間が終了した後、原則として閲覧することができません。
本改正案では、事業者の同意を得た上で、環境大臣がアセス図書を公開することができるとし、その点は一定評価いたします。アセス図書の手続きや細かな基準は、法律や条例、告示により定められています。
提出されたアセス図書がそれらの基準に合っているかどうかを確認する主体は、環境大臣や主務大臣ならびに都道府県知事や政令市の市長などとなっていますが、アセス図書に求められる基準や提出すべき資料・データは、どのように決められているのか伺います。また、事業者が提出したアセス図書について、必要なデータが十分に揃っていない、あるいは記載内容が形式的で実質を伴っていないといった問題が生じる場合、提出されたアセス図書が基準に適合しているかを誰がどのような基準で審査しているのか、また、審査における判断の透明性をどう確保しているのか、大臣に伺います。(環境大臣)
7. また、アセス図書の公開において、事業者が一部のデータなどを公開しない場合や、虚偽記載があった場合、環境影響評価法あるいは条例で、政府や地方公共団体はどのような対応を取ることになっているのか伺います。また、公開資料の透明性について、例えば長野県のトンネル建設計画における意見書の黒塗りや、東京都の焼却施設計画における図面の黒塗りが報告されていますが、こうした資料の不透明な公開について、どのように考えているのか、見解を伺います。さらには、アセス図書の公開期間については、少なくとも該当する施設が稼働している期間中の公開が望ましいと考えますが、大臣の考えを伺います。(環境大臣)
8. 次に、環境影響評価図書の活用について伺います。
環境影響評価図書には、環境影響や生物調査に関する貴重なデータが含まれており、事業の実施以外にも、研究促進や技術向上に活用することが期待されています。また継続的に公開されることにより、事業者が他事業者の環境保全措置等を参考にできるなど、情報共有を図ることができます。環境省においては、環境影響評価図書に含まれる貴重なデータを収集するだけではなく、累積的影響評価の実施などを含む将来の利用に供するための環境データとして集積を行い、例えば環境アセスメントデータベース「EADAS(イーダス)」に情報を反映するなど、検索・抽出できるシステムを構築することも可能になると考えますが、今後のデータの活用方針や具体的な取り組みについてどのように考えているのか大臣に伺います。(環境大臣)
9. 最後に、戦略的環境アセスメントの導入について伺います。
1997年に法制化され、2011年に法改正された我が国の環境影響評価法は、評価の対象を事業単位であることを前提としているため、国や自治体などの複数の事業に関係するような計画や、事業に先立つ上位計画や政策等の段階は評価対象とされていません。
諸外国では、政策等の立案主体が、環境影響を予測評価し、その結果を政策等の意思決定に反映させる「戦略的環境アセスメント」の導入が進んでいます。
そこでまず、2011年の第177回国会における附帯決議でも戦略的環境アセスメントの制度化に向けた検討が政府に求められていますが、この附帯決議に対して、これまでどのように取り組んできたのか伺います。そして、事業の実施段階の環境アセスではなく、国や自治体などが事業に先立つ上位計画の立案段階や、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある道路、河川やダム、鉄道、発電所、廃棄物処理施設、広域複合開発などの計画等を立案する段階での戦略的環境アセスメント導入について、その必要性の有無も含め、政府はどのような認識を持ち、どのように取り組みを進めようとしているのか、お答えください。(環境大臣)
立憲民主党は、多様な生態系や自然環境との調和をはかりつつ、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、持続可能な社会をめざします。そのために今後も現場の声を丁寧に拾い上げ、制度改革に全力を尽くすことをお誓いし、私の質疑を終わります。ご清聴ありがとうございました。